2月

2月。
父が買ってきた水仙。
好きな香りだけど、なんとなく、なんとなくなんだろうなあ、と思って
それが何かわからなかったけど、しばらくして思い出した。
母の最後の病室にお見舞いに届いたのが水仙で、
もちろん喜んだのだけど、しばらくして
香りが強いから外に出して、と頼まれた。
そのことも忘れてたけれど、香りの記憶としては残っているみたい。
夏の入院のときに自分自身が同じ経験をした。
病室に好きな物をいくつか持っていって、その中に好きなキャンドルと
好きなポプリも。
もしかしたら香りがいやに感じるかな、、、と若干思ったのだけど。
体も起こせない数日があって、そのときは本当ににおいがだめだった。
目を開けるのもしんどく、聴覚の事はよく覚えていないけど、
嗅覚だけはとても敏感で、看護師さんのお化粧のにおいや、
ベッドから少し離れたところにある箱に入っている
キャンドルの香りがだめで家族にもって帰ってもらったくらい。
そんなことを思い出したら、あのときの母は本当にしんどかったんだろうなあと
しみじみ思う。
最後まで一言もそんなことを言わなかった。
本当のところ、いろんなことをどう思ってたのかも聞けなかった。
どうしても聞いておきたかったのか、子供のころにした私の過ちは
ママのせい?と聞いてきたので、違うよ、とやり取りをしたのが
普通に話せた最後だった。
考えても仕方のない事、どうしようもない事は考えないようにしている。
そうじゃないとくよくよくよくよと考えてしまうから。
だから母の事も、無理に思い出さない。
時々、おそるおそる記憶の中でふたをしたところにそっと近寄ってみるのだけど。
来週でもう12年。
思い出さなかったら忘れてしまうかもしれない、と12年前の私は
怖くなりながらもそっと蓋をしたけど、大丈夫そう。